八島ヶ原 霧の中の冒険

9月12日
午後から急に予定が開いた

せっかくの時間
「おいでよ」と呼ばれたような気がした

霧に濡れた車山のリフトに乗って山頂
雲の上に出ると真っ白な雲海が広がる

八ヶ岳、蓼科、浅間山が頭だけを出している
幻想的で不思議だが、安心感のある世界

空にも海があるのだなと実感

車山の山頂を後にする
笹の風にそよぎながら湿原に下りる

早くもきつね色に染まりはじめた景色
木の板の自然歩道をゆっくりと進む

途中、年配の夫婦に道を尋ねる
周辺の地図をいただく(これが役立った)

蝶々深山の岩の向こうにはまた別の雲海
方角からして御嶽山のお姿も現れた

またしばらく歩くと物見岩
観る角度によって優しくもあり、厳しくもある

縄文の時代から続く石の彫像
山を見つめ、空を仰ぎ、八島ヶ原に祈りを捧げる

太陽の女神であり、星の女神でもあり
水の女神でもある

気高さを感じる

岩山を下ると水の湿原
諏訪から登る霧の精はせせらぎとなる

霧ヶ峰を包む豊かな雲水は八島を更に潤す

遊歩道もところどころ水に沈む
少しだけ注意が必要だ

この日の湿原は霧雲の白い世界
すすきの道をぐるりと回る

御射山神社に立ち寄ってご挨拶
駐車場の入り口に着いたのは六時を回っていた

赤く染まりはじめた広大な湿原
地平線に浮かぶ不思議な世界

意識もぼんやりしてしまいそうな異空間
水の精霊はここに住むんだと納得してしまう

太古からつづく深山の湿原
縄文の民も異次元の感覚を楽しんだのだろう

20

さて、この日はバスもない
歩いて車山に帰ると覚悟していたが・・・

不思議なものでビーナスラインを和田峠方面へ
霧雨の白い世界を懐中電灯でゆっくりと進む

帰宅するには反対の方向だ

中々着かないと思いながらも坂を下る
鹿の鳴き声が山に木霊する

もしかしたら反対方向かと気づいていた
しかし体も心も温かい

「この道を行きなさい」と導かれているような気がした

身を託して進むと和田峠のビーナスライン入り口
「やっぱりな」と自らにあきれている私

もともと帰りの交通手段を考えずにきたのだから
無謀ともいえるが、この白い世界の日に呼ばれた

誰も通らない雲海のビーナスライン
霧の精に守られていたような気がした

「霧ヶ峰の本当の姿を教えてあげる」と(笑顔)

さて、どうするかと思案
ヒッチハイクを決めて懐中電灯を回す

しばらくすると車高の低いシルビアが止まる
事情を説明して車に乗せいただく

介護施設で働く「二十歳」の女性
気分転換に山道を走りに来たらしい

警察と間違って車を停めてくれた偶然の女神
猛スピードで霧の中を走る車

20分ほどで車山高原
感謝のガソリン代を2000円お渡して見送る

マニュアル車の若い走り屋
ナンバーを見とどけると「20」

二十歳の20番
これまた不思議な感覚に染まった夜

時計を見ると20時まじかになっていた
縄文の女神は20の象徴だったのかもしれない

どんな意味?
霧の八島の20と女神