また来ましたよ
この季節、山を登るのにはわけがある
人が少なくなったころを見計らって薬王院
天狗の仮面に守られる寺院
夕刻六時の鐘が厳かに響き渡る
その前に立ち、体も心も音と共鳴する
いつものように高尾駅で下車して歩く
この日は線路横の路地を進む
迎えてくれる苔むす路の壁
浅川では尾が錦に輝くトンボが親しげに羽を広げる
両界橋の下では若者が川に飛び込んで水遊び
気持ちよさそうだ、と羨望のまなざしを向ける
清流の音を登ろうとして蛇滝のルートを進む
水不足でちょっと心配になるせせらぎ
中腹から眺める街の景色は緑も濃い
薬王院に到着すると宿坊の方向に進む
山門下の天狗杉、この場所の大杉
どれも見事で力強く、空に伸びる
和の建築にこころもなごむ
静かに守られている福徳弁財天
高尾の山の奥深くに続く聖なる水の洞
心ある人だけに、来てほしい
そんな山の願いが聞こえる
弁天洞にお参りした後、薬王院を登る
神仏分離前の本殿鳥居は朱も鮮やか
階段の一番上で、しばらく目を閉じる
いろいろな小鳥たちの声が聞こえる
山の天狗さんは、とってもやさしい
静かに、力強く、生命を見守っている
風になり、雲になり、蝶になり、鳥になり
いろんな姿で言葉をかけてくれる
山の夕闇が気になる
懐中電灯も雨具も準備していない
本殿からもう少しだけ進んでから下りよう
風の通り道となっている奥宮上のベンチ
夕日が木漏れて、草木が黄金に染まる
下山は一般ルート
夕焼けを楽しみながら里に着く
半月(上弦の月)の手前の月
木星が寄り添うように西の空に輝いている
ゆったり、ほんわかした高尾の一日
「登るも、下るも、へっぴり、へっぴり」
ここに来ると、一歩一歩の大切さを思い出す
わたしを蘇らせてくれた、特別な山
さて、次が始まる